8番出口ライクの作り方

上級者向け

動機:流行りのゲームを自分も作ってみたい!

最近は面白いゲームなんかに出会うと、こんなの自分も作ってみたい!もし、作るとしたらどういう構造になるんだろう?と自然と考えてしまうようになりました。

今回の記事は作り方の詳しいチュートリアルではなくて、脱出ゲームメーカーである程度ゲーム作れるようになった人向けに、制作の裏側を紹介する感じの記事です。

脱出ゲームメーカーでは乱数を発生させることができますし、そしてそれをフラグに組み込むことができるので、UEやUnityのようなツヨツヨのゲームエンジンじゃなくても、脱出ゲームメーカーでなんとか似たようなものが雰囲気作れるんじゃ?という実験が無性にしたくなった、というのが今回の制作動機の全てです。

作ってみて勉強になった、と感じられたことがいくつがあったので、勝手に共有させて頂こうかと思います。

まだプレイしていない方は、せっかくなので一度プレイして頂いてからこの記事を読んでほしいですね。

↓0番窓口~異変を感じなかったら窓口で受付する、異変を感じたら銀行を出るゲーム~

https://dasshutsu.games/game/-O7F-9adCRxa1ICDvBpG(脱出ゲームメーカーのサイトへリンク)

構想:まずどうやって作る?

本家様は、UE最大の強みである実写と見間違えるほどのリアルなグラフィック。そこを一人称視点でプレイするのが最大の特徴であり、没入感ですよね。

当然ながら、脱出ゲームメーカーでここまで到達は不可です…。

しかしながら、8番出口のシステムをぎゅぎゅーっと単純化してしまうならば、

プレイヤーが画面を表示する度に画像が変化したり、しなかったりする。プレイヤーがその変化に対応した行動を起こせばOK、起こせなければNG。

という解釈でなら、乱数とフラグの活用なんとかなりそうですな。

舞台を決めよう

誰もが見たことある身近なところ、8番出口と語呂が似ているタイトルにしたい。

うーん、窓口とか。窓口といえば銀行?

雰囲気をどうしよう

私の力量ではただの間違い探しになってしまいそうで、それではゲームとしてとても薄味になりそうだ…。

本家様のテイストをそのまま採用させていただき、不穏や不気味といった調味料に頼ってなんとか料理に仕上げてみよう。

工夫が必要

本家様と変えなければならなかった点としては、先の項目どおり、単純な間違い探しになってしまわないよう、「異変」だけでなく「変化」も起こすようにしました。

例えば「待合室にいる人物の数が変化する」のは異様ではなく、通常ありえる「変化」。

逆に「窓口の銀行員が能面を付けて対応している」のはちょっとあり得ない異様な「異変」。

こうやって少し膨らませれば、プレイヤーは少し悩んでくれるだろうし、これは変化?異変?と判断を迫られるところにゲーム性が出てくるかと。

実践:いざ作るぞ!

まず「異変」と「変化」のアイデア出し

異変も変化もいろいろ案を出してみましたが、結局、実装の可否の都合でボツ案の方が多かったように感じます。

先にシーンを作っておくぞ!

窓口9~5番用の待合室シーン

銀行の玄関、待合室、受付機のアップ、ATMコーナー、窓口。

このベースとなるシーンにシーン部品をペタペタ貼って異変と変化をランダムで表示させるぞ!とはじめは単純に考えていたのですが、作り始めて早々に気が付いたのが、

ひとつのシーンに異変と変化全部詰め込んだらぐっちゃぐっちゃになるぞ…!!ということ。

制作管理がしやすいように、

窓口13~10へ繋がるシーンのグループ、同じく窓口9~5のグループ、同じく窓口4~0のグループ、の3グループに分けました(異変の画像の都合上、実際はもっとシーン数が多いです)。

これにともない、窓口13~10、窓口9~5、窓口4~0ではそれぞれ違う異変と変化が現れるようにしました(0番窓口は演出上異変が起きないようにしてあります)。

シーンコピーを活用して見た目同じようなシーンを3グループ分作ったわけですが、やっぱりコピー由来のバグが頻発しましたね。

見た目は同じシーンばかりなので、デバッグ機能を使っててもテストプレイの時に今どのシーンに自分がいるのか分からなくなりました。

肝心な乱数の種類と管理

異変出現確率は悩みましたが、プレイヤーが銀行を訪れるたびに五分五分になるように。

各々のグループで異変乱数を1~8とし、

1の時は猫の異変、2の時は看板の異変…というように4まで割り当てました。逆に5~8は何も割り当てていません。

これで4/8の確率、つまり1/2の確率で異変が現れるはずです。(なので運によっては一度も異変が起きずにクリアすることもありえますね…)。

その他通常の変化を出現差せる乱数は複数作りました。

待合室の人物乱数、玄関の看板乱数、ATMの人物乱数。

異変と変化の乱数をバラバラにすることで、よりランダム感が出たかなと思います。

そして、

とにかく玄関に戻ったら全てのフラグはいったん初期化。乱数も一斉に切り替わります。

窓口の番号の管理方法

「現在の窓口数値」という数値フラグをつくり、初期値を数値セットで13に設定します(窓口番号が13からスタートなので)。プレイヤーが正解の行動をとれば1減算、間違った行動をとれば数値セットで13をセットします。

正解の行動と間違った行動の分岐は、異変乱数4以下の時受付したか否か、異変乱数5以上の時受付したか否か、というように管理できたので、異変の種類が多くてもわりと管理しやすかったです。

この「現在の窓口数値」フラグで窓口に表示される番号、番号札の番号、移動先の玄関シーンを分岐しています。順調に数値が減算されれば、若い番号の窓口へ繋がる玄関シーンに移動できますが、数値が13になったら、強制的に最初の玄関シーンに移動させられます。

アイテム:番号札について

窓口はタップでも行ける予定でしたが、番号札を発券してる/してないでの分岐がより複雑になるため、アイテム蘭の番号札からしか行けないように縛りました。

アイテム蘭については面倒だと意見がありましたが(確かに面倒)、番号札を手元に持っている感を演出したかったのと、さらりと窓口に行けるのではなく、窓口へ進むことは特別な行動感を演出したかったのもあります。

しかし、最大の失敗はアイテムを14個にしたせいでアイテム削除の行数多くなったが面倒だったこと。アイテム状態変化で管理すればアイテム削除は一行で済んだのにね…。

あとシーンはコピーできるけれど、アイテムはコピーできないのでイベント入力がしんどかったです。

グラフィック調達の問題

そもそも絵が調達できないと作れない!!

せっかくなのでリアルよりの絵が欲しいけれど、実写ぐらいリアルだと加工ができなくなる。。。という私のわがままを叶えてくれる素材に運良く出会えることができました。

【フリー素材】みんちりえ様に深く感謝申し上げます。

これ手に入らなかったらたぶん別な舞台にしてました。

いつものように他人様の画像を叩いて伸ばして切って貼って背景をつくりました。

個人的によく作れたなと思うのは人物のシルエットです。これは100%自作ですね。スタイルや姿勢がそんなに良くない、実在しそうな人物のシルエットを意識しました。

言い訳:本当はここまでしたかったけれど…

噂によると本家様は、一度引っ掛かった異変が何度も出現する、などプレイヤーの行動にあわせて難易度や確率が変化しているのではないか、とのこと。

まあ、できなくはないですが…脱出ゲームメーカーでそこまでやるのは狂気の沙汰でしょう。

異変が全回収できたかどうかは、脱出ゲームメーカーはシステム上再プレイしても前回までの内容を引き継ぐことができないので、プレイヤーが1回のプレイでわざとループして全回収してくれない限りは「全回収おめでとう」みたいな演出は出来ないでしょうね。

なので、「13個あるから全部見つけてみてね」などという構って欲しいメッセージの表示で終わっています。

受付機のお待ちの人数と待合室のシルエット数が最初は関連がなかったのですが、これはプレイヤーによっては異変だと感じられてしまうかな、と思い最後に急遽すりあわせをしました。実際にテストプレイで、待合室シルエット0なのにお待ちの人数3とか表示されてしまっていたので、これは直して良かったかなと思います。

音もつけたかったのですが、ちょうどいい環境音が無かったので無音で。

異変の案としては、異様なBGMが流れるというのも考えましたが、音を出さないでプレイする人も多い界隈ですしね。

感想:名作を模写するのは勉強になったぞ!

当たり前ですが、改めて…ただただランダムで変化が起きるだけではゲームにならないんですね…。

工夫や調整、演出がやっぱり必要なんだなあ、と。

脱出ゲームもRPGも放置ゲームも、色を揃えるパズルだってそうだけど、先人が「これはこう遊ぶゲーム」という概念を植え付けてくれたからプレイヤーも混乱せず遊べるわけで、異変探しゲームもプレイヤーがある程度遊び方を分かってる前提でないとなかなか難しいところがあるのかもしれませんね。

なので、パイオニア的作品をつくれる人は偉大だと感じました。

そして、他人様の作品を習作として模写してみるのは、プレイするだけでは気づかなかった部分を学べる機会だとも感じました。

また何か実験的なものも作ってみたいですね。

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